脈々と連なる山々が朝日に映える様が、機内の窓から確認出来た。ラダッキと思しき顔立ちの人々、インド人たち、そして袈裟を纏った仏僧たち。彼らの中に紛れてわずかばかり搭乗していた外国人旅行客は、僕も含め皆息を呑んだ。山々の起伏は勿論の事、その表面を覆う雪の結晶が放つ光のスペクトルすら粒さに見て取れるのではと錯覚してしまう。すれすれの所を飛んでいるような気がする。レーが近づくと、飛行機は旋回を繰り返した。 この日の早朝、僕は悪天候によるキャンセルがしょっちゅう起こるというフライトに乗るべく、予約していたタクシーで空港に向かい、搭乗ゲート前で時間を潰していた。 まどろみながら本を読んでいると、後ろから突然日本語が聞こえてきた。盗み聞きするつもりはないが嫌でも耳に入ってくるその会話内容から推測するに、声の主は決して旅行客ではない。果たしてこの季節にラダックに向かう旅行客以外の日本人がいるだろうかと驚いたが、会話の主がお子さんを連れている事でやがて察しがついた。ラダックの男性と結婚し、ラダックで旅行会社業を営まれている著名な女性だったのだ。(僕は以前からその方のブログを愛読していたので、図らずも気づいてしまった) 声こそかけなかったもののこの一方的な出会いに少しばかり感激し目が覚めた頃に、ちょうどボーディングゲートが開いた。無事、フライトは予定通り運行されるらしい。 デリーからレーへのフライトは1時間と少しだったと記憶している。 タラップを降りると辺りは曇っていて遠くの景色まで見えなかったが、自分が山間にいることだけはわかった。ひどく寒い。そして、確かに空気が薄い。 いそいそと空港の施設内に駆けこむも、屋内も寒かった。適当に運ばれてきたバックパックを確保した後、その辺にたむろしていたミニバンタクシーを捕まえ、旧市街まで向かった。あまりにも薄着の僕を見て、ドライバーは我が事のように悲鳴を上げたのだった。 この季節に営業している宿は数少ない。 レーで最も歴史の古いゲストハウスが旧市街の一角にあり、冬季でも頼めば泊めてくれるという噂を知っていた僕は、その親切な宿を目指した。 時刻は朝8時くらいだっただろうか。木製のドアを開き、人を呼んでみると老齢の主人が現れた。やはり今は営業期間ではないが、泊めてやらんことも無いという。ストーブの有無で一