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ミャンマー(その3) - ブルー・サマー

ヤンゴンに降り立った僕をまず出迎えてくれたのは、まさかのお馴染みのロゴだった。

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そういえば、日本での上場が難しいマルハンが東南アジアで金融業を営みはじめた、というニュースをいつだったか目にしたことがある。カンボジアあたりでマイクロファイナンスをやってるだとかなんだとか書かれていた気がするが、記憶は曖昧だ。

まさか見慣れたパチンコ屋のロゴに出迎えられるとは思っていなかった僕は一瞬戸惑ったが、落ち着いて空港内を見渡してみると、ここは確かにヤンゴンであった。

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イミグレーションを通過し、空港内の両替所でUSドルをミャンマーチャットに少しばかり替えた。レートは悪くない。

ヤンゴンのダウンタウンで落ち合う予定の先輩が到着するまではあと3時間ほどある。時間を持て余した僕は、ダウンタウンまでローカルの電車で向かってみることにした。

空港を出るとすぐに僕を取り囲むタクシードライバーたち。うるさく客引きしてくる彼らのうちのひとりに行き先を告げてみる。
「オッカラパステーションまで行って欲しい」
「オッカラパ?」
ドライバーが聞き返す。
「そう。駅の、オッカラパ。そこから電車を使ってダウンタウンまで行く」

ドライバーは幾分怪訝な顔を見せた。タクシーを使えば快適に、しかもたった30分程度で辿りつけるのに、おんぼろでガタガタ揺れるわ、定刻通りに来ないわ、おまけにしょっちゅう止まるわで安さ以外に取り柄のない電車を使いたがる旅行者はあまりいないようだった。

料金交渉を適当に済ませタクシーに乗り込む。距離を勘案するとやや割高な言い値だったが、ドライバーに電車のチケットを買うのを手伝ってもらう魂胆だった僕は特に面倒な事を言わなかった。

「なんで電車なんかに乗りたがる?ボッロボロだよ?」
ハンドルを切りながら、物好きな旅行者にドライバーが問う。
「電車の窓からヤンゴンの景色を見たいんだ」
彼は納得のいかない顔をしていたが、それ以上質問を重ねなかった。

長く陰鬱な雨季を終えたばかりのヤンゴンの街は、幾分湿った温かい風に包まれていた。

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未舗装の道路を走ること10分程度。僕はオッカラパ駅にたどり着いた。駅、というよりは、線路の両側にコンクリートで足場を作って屋根をつけただけ、という様相の場所で、当然改札などなかったが、小さくてかわいい駅舎がちょこんと構えられていた。

電車の乗り方を尋ねるとドライバーは快く教えてくれ、こちらから言い出さずとも僕の代わりにチケットを買ってくれた。(しかしこれはミャンマー人用のチケットだったので、あとで外国人価格のものを買い直すハメになったのだが)

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ドライバーに別れを告げ、ヤンゴン市内を2時間半程度で一周する環状線を待つ。

重い荷物をホームにおろすと、ふっと体が解放された。辺りをぐるりと見渡し、タバコに火を付ける。煙を吸込み、吐き出す。目に映る景色が、緑色が、赤色が、ビビッドになっていく。やわらかな日差も手伝って段々と緊張がほどけていった僕は、ここで初めて自分が東京を出たときとまだ同じ格好をしていることに気づいた。駅舎の事務室を借りて着替えさせてもらっていると、かたんことんと乾いた音を立てて呑気に電車がやってきた。

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電車は評判通りの酷い揺れ具合で、でかいカバンを背負って立っているといるとよろめいてしまう。親切なミャンマー人たちは笑顔で窓際の席を譲ってくれた。

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車窓からの眺めは特段面白いものではなかったが、それでも安っぽい旅情をかき立てるには十分だった。

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電車は駅でもなんでもないところでたまに停車しながら、ゆっくり、ゆっくりと僕をヤンゴンのダウンタウンへ連れていく。最初はびっくりした揺れも、慣れてしまえばゆりかごのように心地よく感じた。



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ミャンマー旅行記


ミャンマー(その1) - ウォーキング・イン・ザ・リズム
ミャンマー(その2) - ずっと前
ミャンマー(その3) - ブルー・サマー
ミャンマー(その4) - あの娘が眠ってる
ミャンマー(その5) - デイドリーム
ミャンマー(その6) - スマイリング・デイズ、サマー・ホリデイ
ミャンマー(その7) - ジャスト・シング
ミャンマー(その8) - メロディ
ミャンマー(その9) - ロング・シーズン
ミャンマー(その10) - 100ミリちょっとの
ミャンマー(その11) - エヴリデイ・エヴリナイト
ミャンマー(その12) - ゆらめき・イン・ジ・エアー
ミャンマー(その13) - アイ・ダブ・フィシュ
ミャンマー(その14) - それはただの気分さ
ミャンマー(その15) - バックビートにのっかって

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