遺跡群に向かう前に、ドライバーは小さな仏僧たちの学校のような所に連れて行ってくれた。
ちょうど昼飯時だったようで、幼稚園児から小学校低学年くらいのちび仏僧たちがもりもりと飯を食っている。その光景を写真に収めろと彼は言う。いかにも外国人観光客が好みそうな絵なので善意で薦めてくれていたのだろうが、飯を食ってるところにどでかいレンズを向けられて良い気持ちのする奴はいない。おまけに彼らは、自分たちが外国人たちの好奇の目に晒されている事に気づいていながら、一切の抵抗もしなければ、金をせびってくることもない。シャッターを切るのはなかなか気の引けることだった。
ガンジス川ではくそったれ似非サドゥーが自ら進んで被写体になり、寄付をよこせなどとアホみたいなこと言ってくる。アレッピーのチャイニーズ・フィッシング・ネットを使った釣りの様子を見に行けば、見物料を請求される。サパの少数民族が家々をホームステイ先として開放しているのなんて立派なビジネスだ。
君たちは何だ。僕らの存在に気づいてチラッと目を向けはするものの、レンゲを口に運ぶ仕草を止めようとさえしない。
彼らの食事風景を眺めていると先生と思しき大人の仏僧が現れ、僕らのほうに近づいてきた。きっと怒られるんだ。そう直感して身構えつつも、この無抵抗ながきんちょたちを守る人間がいるという事実にホッとした。ところが僕らは怒られなかった。その代わり、その仏僧は僕らに、日本人の寄付によって植えられた小さな苗木を見せてくれた。そうじゃないだろう。君たちは何なんだ。たいそう居心地が悪くなった僕らはすぐその場を離れた。ドライバーは不思議そうな顔をしていた。
しばらくハイエースに揺られた僕らはようやくオールドバガンと呼ばれる、遺跡群が広がる広大なエリアに到着した。車の中では散々馬鹿な冗談ばかり言っていた気がする。
オールドバガンのパゴダの大抵が赤レンガで作られたものであり、数百年の時を経てなおその形を留めている。
各パゴダの立つ敷地内では履物を脱がなければならない。仏塔の中に入ることができるものもあれば、その外壁を登ることができるものもある。
オールドバガンに着いてすぐに連れてこられた小さなパゴダは登るにはちょうどよさそうな高さだった。レンガの上は1分と立っていられないほど熱せられていたが、半分火傷しながらよじ登る。
小さなパゴダによじ登った僕らは、オールドバガンの広大な土地に広がる遺跡群の全体像をようやく目にすることになる。見た渡す限りの約40平方kmの土地に、大小3000超の仏塔が点在している。
くそみたいな写真しか撮れてないのが残念でならないけど、この時目にした光景を写真に収めることなんてハナっから無理のは明らかだった。鮮烈な映像が僕らの頭の中に叩きこまれた。この映像は一生忘れられそうにないな、そう思った。
==================
ミャンマー旅行記
ミャンマー(その1) - ウォーキング・イン・ザ・リズム
ミャンマー(その2) - ずっと前
ミャンマー(その3) - ブルー・サマー
ミャンマー(その4) - あの娘が眠ってる
ミャンマー(その5) - デイドリーム
ミャンマー(その6) - スマイリング・デイズ、サマー・ホリデイ
ミャンマー(その7) - ジャスト・シング
ミャンマー(その8) - メロディ
ミャンマー(その9) - ロング・シーズン
ミャンマー(その10) - 100ミリちょっとの
ミャンマー(その11) - エヴリデイ・エヴリナイト
ミャンマー(その12) - ゆらめき・イン・ジ・エアー
ミャンマー(その13) - アイ・ダブ・フィシュ
ミャンマー(その14) - それはただの気分さ
ミャンマー(その15) - バックビートにのっかって
==================
ミャンマー旅行記
ミャンマー(その1) - ウォーキング・イン・ザ・リズム
ミャンマー(その2) - ずっと前
ミャンマー(その3) - ブルー・サマー
ミャンマー(その4) - あの娘が眠ってる
ミャンマー(その5) - デイドリーム
ミャンマー(その6) - スマイリング・デイズ、サマー・ホリデイ
ミャンマー(その7) - ジャスト・シング
ミャンマー(その8) - メロディ
ミャンマー(その9) - ロング・シーズン
ミャンマー(その10) - 100ミリちょっとの
ミャンマー(その11) - エヴリデイ・エヴリナイト
ミャンマー(その12) - ゆらめき・イン・ジ・エアー
ミャンマー(その13) - アイ・ダブ・フィシュ
ミャンマー(その14) - それはただの気分さ
ミャンマー(その15) - バックビートにのっかって