ミャンマービールとの出会いを存分に楽しんでいると、更に遅れてヤンゴン入りしたもう一人の先輩から連絡が入った。やはりスーレー・パゴダで落ち合うこととし、既に4杯ほどビールを飲み干していた僕らはやや浮かれた足取りで待ち合わせ場所へ向かった。
スーレー・パゴダにつくと、先輩は北側の入り口にちょこんと座っていた。再会の挨拶もほどほどに彼女を件のゲストハウスに連れていき、チェックインを済ませてもらう。
時間は少し早かったが、僕らの興味は晩飯に向いていた。スーレー・パゴダから西に800メートルほど歩いたところに何やら串焼きとビールで有名な通りがあるらしい。身軽になった先輩を加え3人となったパーティは、洋々とヤンゴンの街を闊歩した。
淡い西日を受けて輝くスーレー・パゴダはダウンタウンにあって明らかに異質な存在に見える。
ダウンタウンはバイクの乗り入れが規制されているらしく、帰宅ラッシュ時においてもホーチミンやバンコクのようなけたたましいクラクション音が聞こえない。東南アジアの主要都市の中でもここまで静かなところは珍しいんじゃなかろうかなどと考えながら、夕暮れの街を歩いた。
目当ての通りに向かう途中、路上の喫茶店に寄った。足の低いプラスチック製のテーブルの上に中国茶が置かれている。甘ったるいインスタントコーヒーを飲みつつ、約5円ほどで買った葉巻をふかし、せっかくなので、と横で売られていた屋台料理も注文した。
「ヒン」と呼ばれる、具材が油にどっぷりと使った一見カレー風の食べ物や、空芯菜のような中華風の青菜の炒めもの、石のようなチキンの揚げ物を食う。この手のいかにもローカルフード然とした料理が何よりも好きな僕にはたまらない食事だった。
小腹が満たされたところで当初の目的地であった通りへ向かうと、徐々にあたりの雰囲気が活気づいてきた。各種屋台が並び、いろいろなものが雑多に売られている。
十数メートルの幅の道路の両側に、テーブルと椅子、そして串焼き台を隙間なく並べた目的の通りは200メートルほど続き、多くのミャンマー人と少しの外国人旅行客で賑わっていた。
つい先ほど軽く飯を食ったばかりだというのに、気分の昂ぶっていたぼくらはビールが飲みたくてしょうがなかった。適当に店を決めて早速ミャンマービールを頼む。
奇しくも集まったメンバーは全員酒飲みだ。何杯ものビールがオーダーされ、礼儀正しいボーイたちが次々と瓶を運んでくる。僕らはそれを、延々と胃袋に流しこむ。ドーパミン的な何かが分泌されていく。知らない街に、身を預けていく。