朝5時半ころ、僕らはヤンゴン空港の国内線ビルにいた。
前の晩は何時に寝たか定かでない。酩酊状態でゲストハウスに到着後、自分で思い返しても驚くほどテキパキとシャワーを浴び、糊はあまり効いてないものの冷たくて気持ちの良いシーツの中にするりと滑り込んだのだった。
「4時ですよー」
眠ったと思った次の瞬間聞こえた先輩の声を目覚ましにのそのそと動き出し、6時半のフライトに乗り込むべく、夜も明けぬうちにゲストハウスをチェックアウトした。
明らかにスティル酔っぱらいな先輩たちは、カウンターでチェックインを済ますなりこの早朝からビールを煽っている。馬鹿だ。
搭乗時刻になり、小さなプロペラ機に乗り込む。
目的地はバガン。まさか自分の人生においてアンコール・ワットより先に目指すことになるとは思っていなかった、遺跡群の広がる屈指の仏教聖地だ。
搭乗を済ませた僕は、離陸してすぐに眠りの淵に引きずり込まれたのだった。
目を覚ますとそこは既にバガンだった。空港は簡素な作りで、バゲージ・クレームにはベルトコンベア的な設備もなく、空港職員が荷台に乗っけられたかばんをホイホイと建物の中まで運んでいた。
遺跡群を観光する目的でバガンを訪れた外国人は、入域料として$10を払わなくてはいけない。空路でバガンに降り立った僕たちは空港でこの金を払い、チケットを手にした。
バガンという場所は、外国人客を探す流しの馬車がウロウロしたりビールを振舞う店の英語表記の看板があちこちに立てられていたりと、観光地らしく幾分うかれた雰囲気の街であるが、それでもミャンマー最大の都市で喧騒渦巻くヤンゴンから来てみるとのどかで静かな場所であるように感じた。
ゲストハウスの集まるニャウンウー村までタクシーで運ばれる間、捕まえた日本人3人組に取り入ろうと、ドライバーはへたくそな英語で一生懸命僕らの国についての知識を披露してくれた。どうやら彼は、僕らのバガン観光の足となるタクシーチャータープランを売り込みたいようだった。いつもならこの手の輩を相手にする気になれないのだが、このドライバーはどこか憎めないばかりか何か誠実さのようなものまで感じる奴だったので、僕らはとりあえず名刺だけもらってニャウンウーの市場でタクシーを降りた。
時刻はまだ朝8時過ぎ。本来なら睡眠不足と二日酔いでぐったりしているはずの僕らだが、これから始まる1日を思うと足取りは重くなかった。抜けるような青空と、ヤンゴンと比べてカラッと乾いた空気が心地よかった。
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ミャンマー旅行記
ミャンマー(その1) - ウォーキング・イン・ザ・リズム
ミャンマー(その2) - ずっと前
ミャンマー(その3) - ブルー・サマー
ミャンマー(その4) - あの娘が眠ってる
ミャンマー(その5) - デイドリーム
ミャンマー(その6) - スマイリング・デイズ、サマー・ホリデイ
ミャンマー(その7) - ジャスト・シング
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